木挽きが生まれる前 木挽きの起源 職人の時代 木挽きの衰退 木挽きの現状
古代、中世、鎌倉〜南北朝時代にかけては、古墳時代とあまり変わりなく直角に挽く横挽き鋸が全盛でありました。板材は楔(くさび)や鏨(たがね)で木目に沿って割り割いて作り[割り木工という技法]、板の表面を槍鉋(やりがんな)・手斧(ちょうな)といった道具で仕上げていました。このため、この時代の建物には割り木工に適した材料、つまり木の繊維に沿ってまっすぐに割れる性質を持った木である杉や檜が多く使われていました。もちろん、軽くて丈夫、まっすぐで狂いが少なく長持ちするという大きな理由もありましたが、まず加工しやすいことが前提であったからでしょう。とはいってもたいへん手間の掛かるものであるため、板を多く使った家はとても希少でした。
中世後期にかけて二つの工具の出現が、その後の設計、木工時の技術を飛躍的の発展させた。一つに縦挽き鋸[大鋸(おが)]の出現です。これにより天井板や壁面材などの木材を大量に供給することが可能になりました。
もう 一つは台鉋(だいがんな)です。台鉋の発明で大鋸で挽かれた板材の仕上げが、それまでの槍鉋・手斧仕上げと違い、有効に生産力を高めました。この二つの工具の出現は繊細な日本建築{特に当時の上流階級の住建築}には不可欠なものとなりました。また、大鋸の出現のより二人一組での大鋸引き[木引きと呼ばれる]が、現在の【木挽き】のルーツとなったわけです。 これらの工具の出現の背景には割り木工に適した木の減少があります。古代・中世と仏教が伝わった後、西日本を中心に大きなお寺が数多く建立されさため川や湖を使ってかなり遠くからも多くの大木が運ばれました。そのためにも軽くて水に浮かぶ杉・檜等が好まれ、もうこの時期には全国的にみても杉・檜の大木はだいぶ少なくなり、他の木も使わざるおえなくなっていました。そうして、以前はあまり使われなかった欅(ケヤキ)もこの時期から使われるようになりました。欅というのは杉・檜に比べるとやたら硬く、木の繊維が不規則に絡み合う構造のため楔を入れてもきれいに割れません。さらに、意外でしょうが欅はたいへん重い木で水に浮かびません。大鋸と台鉋ができる以前はたいへん扱いにくい木だったわけです。 また、大工職の組織が確立され、建築技術も中央から地方へ開放された時期でもあります。
近世においてはある意味で“職人の時代”とも呼ばれ、大工、左官、鍛冶、石工、木挽きと種々の職人が活躍した時代です。当時の自社建築等も彼等の手によるものでした。そうしたなかで中央から地方へと渡り歩き、流れていった集団が農村や宿場町、港町にも定着し始め、いろいろな職人制度、技術やその他の定まり等が普及、伝播していきました。それ等にその地方に即した構造、形態などが加えられて、今日の各地方の特色ある建造物となったともいえます。
当時の建築様式は、武家屋敷の書院造りや、茶室建築に影響を受けた数奇屋造りが一般的でしたが、大店(おおだな)や地方の豪農、造酒屋の裏手には大規模で立派な住まいが造られていた事実もあります。こうした背景により、いろいろな趣向に合った材料を挽き割りからそっくり請けて大工に渡すような木挽きもおりました。ですから、この頃の木挽きは間取りの決定から材選びまで関わっており、木造建築において重要な役割を担うもうひとりの棟梁でした。
明治、大正、昭和は機械の発達、コンクリート等の代替物の台頭により職人が急激に減少した時代でした。この頃までに木挽きは銘木専門、船材専門、檜専門、内装の化粧材専門というように分かれて仕事をするようになっていました。そのほうが流通・効率などの面、鋸を何種類も持たなくてよい、などの利点が多かったからです。そして、その数は三百人にのぼっていました。 しかし、戦後まもなくより精度の高い製材木の登場により、それまで羽柄材、野物、構造材といったものまで木挽きによって挽かれていましたが、一般材料が木挽きの手に掛かる事は少なくなり、また船材の木から鉄やグラス樹脂への代替の時期とも重なり、この時をピークに木挽きも減少の一途を辿っていきました。それでも特殊材、高級材、銘木材等はまだまだ木挽きの手に掛かる事が多く、大店と呼ばれる唐木屋、銘木屋では専門常駐の木挽きが何人もいて、朝から林場で木材を挽き割っていました。
現代では、内地材から外国輸入材へ、大衆銘木製品材・製材品の普及、機械に掛からないような大径木の減少により常用で挽くというようなお店(おたな)もなくなり、一年をいくつかの期に分け、各銘木店、材木店をまわり挽き上げる事も多くなりました。木挽きに掛かる物はよほどの大径木、臣樹(おおぎ)や高級銘木材{天井材・床の間材・廊下板}等の特殊なものに限られ、地方業者の依頼や臣樹の伐採の仕事も多くなりました。
歴史のこうした流れの中で木挽きも、現在東京に2人、全国的にみても10人に満たなく、樹種を選ばずその材を最大級有効に挽き上げる技とその木について語れる知識を併せ持つ木挽きの職についているものは数えるほどとなりました。しかしその人たちの足跡は大きく、また今後においては木に携わる人、とりわけ銘木・材木業界の人たちや建築を志す人たちにはよき指針となることと思います。木挽きの歩んできた道は“木の文化”の系譜でもあるわけです。
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木挽きの林組は東京・木場で銘木を主に扱う木挽きとして始まりました。
機械製材が発展し木材利用が多様化した今日、木挽きへの依頼も多様化してまいりました。
主なものを実例を交えて紹介していきます。
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・大鋸の特性を生かした昔ながらの木挽き
機械製材の何倍もの手間をかけ挽く大鋸による造材は木の樹脂を傷めることがなく、また狂いを見越しての木取りで無駄を最小限にすることができます。左一覧上から四つ目までで取り上げているものになります。特に乾燥材においては機械製材との差が見てとれます。例:1〜4
・機械製材にかからない大径木の大割
四尺を超える大径木や曲がり材のかかる製材機は全国でもわずかしかありません。近くの製材所で挽ける大きさまで木挽きによる大割をいたします。大割においてはチェーンソーでの依頼も増えてきました。
薄い板もまた機械にはかからず、木挽きの手により挽かれます。例:5
・場所を選ばず作業可能
固定された機械製材と違い、木挽きは鋸を担いでどこにでも行きます。重すぎてヘリであがらないような大木を山の中で挽き割ったり、現場で建築物などとその場で照らし合わせながら造材しております。例:6・7
・回し挽き
曲がった材を曲がったなりに。目立てを工夫することで鋸なりに挽きあげますから作為的でない自然な曲線・捩れが施せます。元来、海老虹梁や破風などを挽く際の技でしたが最近は飾り柱や見せ梁に使ったりと変わった趣向を凝らしたい建築家からの依頼が主になります。
・木取りの指南
木は木取り如何により材の価値が大きく変わります。
大鋸による造材は手間がかかりますがその分、一本の木とじっくりと向き合います。このことで木を読む目を養ってきました。この経験から銘木、特に大径木において木取りの依頼を受けています。
・立ち木の鑑定
伐採する時期にも最適な時期があります。当然若すぎてはよくありませんが老いすぎるのもよくありません。
老いた木は中が空洞になってしまったり、材にした際の色艶がよくありません。これは材の耐久性にも影響があります。適切な時期に伐採するし材として有効に活かすことがよいのです。
樹形・皮肌・環境などから判断し伐採時期や伐採方法の指南及び木の評価を行っています。
・木挽き鋸・大鋸の修復
木挽きの道具である大鋸は現在、新しく作っているところはありません。
原材料の安来鋼もすでに生産を終え、大鋸の製作を試みることも難しくなりました。
現存する大鋸を使いたい方や大鋸を使用可能なあるべき姿で保存したいといった方々
からの依頼で大鋸の修復を依頼されるようになりました。
・イベント等での実演・体験・講演
多くの方々に木を見て木に触れることで、木を身近に感じていただきたいと様々な方面から依頼を受け木挽きの実演及び体験をいたしております。
木挽きの挽き材を扱うお店
鴨川商店
東京都江東区新木場3-5-4 03-3521‐5521
製材・材木店? 屋久杉・神代杉・ケヤキ・クスなどの板材や柱・梁等の建築構造材と多種多様の木挽きの挽き材を扱っています。
新木場では最大の四尺五寸までかかる製材機を所有していますがそれ以上の大径木の大割、樹脂の痛みやすい杉材や杢が重要なケヤキ玉杢材等では大鋸による造材をしています。木挽きの挽き材以外にも扱う材は銘木から木工用材まで寸法・樹種とも様々でここで探してなければ他所でも難しいと言っても過言でないほど在庫の豊富なお店。
沖倉製材所
東京都あきる野市伊奈1038 042-596-0236
多摩産材? 多摩産材にこだわった建築構造材を主に造材を行なっている。あわせて材を存分に活かした建築・家具造りも行なっている。
こちらでは全て二寸から四寸の座卓用材に挽いた。樹種は杉・ケヤキ・栃・サクラなどで一部製品に仕上げられて展示されている。
銘木市場
東京銘木協同組合
東京都江東区新木場2-1-6 03-3521-6262
銘木市場? 今年は11月に全銘展を控える。木挽きの挽き材も出品される。?吾野原木センター埼玉県飯能市大字平戸2030429-78-1286
原木市場
西川材の集まる市場。良質な杉・桧を求め全国から業者が集まる。
木挽きの林組で原木を仕入れる際はこちらを利用している。
銘木店
?岩崎銘木店千葉県八街市八街103-57 043-444‐7785
床柱? 床柱をはじめ、カウンター等板材の銘木を専門に加工から販売を行なう。
大川銘木
静岡県函南町塚本215 0559-78‐8111
突き板? 幅広・長尺の突き板材。伊豆の良材も多く扱う。天城神代・伊豆の脂松等ここでしか見られない銘木も多数。
主に大割の依頼を受け、真鶴のクスや御用地の松などを木挽きする。
梶本銘木店
東京都江東区新木場1-17-72 03-3522‐0766
銘木販売? 新木場駅から見える本社には広い展示場があり多数の銘木が並ぶ。
HPに同社で杉の輪切り材を木挽きした際の様子を掲載していただいております。
柏原銘木店千葉県市川市相之川3-9-7 0473-58‐0181
社寺材? 主に社寺の材を扱う。桧や欅が主。
芯去り12m二尺幅のケヤキ材など社寺材では希少で特殊な注文となるため、正確な木取りと無駄の少ない木挽きによる造材を行っている。
志賀商事東京都江東区新木場2-10-13 03-3521‐3901
銘木協同組合理事長のお店。銘木全般を扱う。毎年、取引先である住友林業の住まい博では志賀理事長の取り計らいで木挽きの実演を行なっている。
瀬尾木材
東京都江東区新木場 2-6-3 03-3522-1041
銘木販売・製材?
桜・栃・銀杏など広葉樹全般を扱っている。
中でも全国から集められた欅は質・量ともに新木場随一。
福清商店東京都江東区新木場1-4-6 03-3521-9511
茶室・和室の施工。主に大割を受ける。
山安
東京都江東区新木場2-4-6 03-3521‐7990
数寄屋建材? 社屋内に茶室があり、社長自身も茶人。数寄屋材の専門店。
木挽きの挽き肌を活かした化粧材などを造材。
山長銘木
栃木県真岡市東沼17-2 0285-82-2971
銘木商? 伐採から造材まで携わる銘木商。
ケヤキの玉杢など大径木の大割を受ける。
もくもく東京都江東区新木場1-4-7 03-3522-1516
DIYショップ? 新木場駅前にあるお店。一般の方でも気軽に銘木に触れられる。小物づくりに適した小割り材から本格的な家具材まで多くの銘木を扱う。
マルダイ
静岡県富士市大渕2410-1 0545-35-3535
問屋 プレカット? 日本一の材木屋といわれ、銘木から一般材まで、建築にも携わる。
神代杉の大割を受け、その様子は同社HPにてご覧いただけます。
株式会社本田
茨城県土浦市東真鍋町9-35 029-822-2211
木材商? 関東では一番大きいのではないかと思われる製材機をもつ。会社も欅の玉杢から一般木材まで手広く扱う。
美国林業
埼玉県本庄市若泉1丁目6-18-506 0495-24-5888
原木? 銘木を伐採し造材・販売する。大径木を多く扱う。
材木店
オグラ
福島県舘岩村熨斗戸544-1 0241-78-2953
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一般の方でも原木を購入でき、製材・乾燥などサポートを受けて造材できる。
年に一度、林以一による木取り講座を開いている。
浜中材木店
東京都日の出町大字大久野843-3 042-597-0722
木材・製材? 主に多摩産材を扱う。東京の木で家を造る会に携わり、植林・製材・建築と一環して関わることでより良い木のあり方を追求している。
山昭木材
静岡県伊豆の国市奈古谷1863-5 055-949-4280
木材・製材? 桧を主に伐採から製材、建築と一貫して行う。
原木を多く在庫し、用途にあった木選び、造材をしている。簡単なようで難しく、このような業者は希少。
小岩材木店
岩手県西磐井郡平泉町平泉字柳御所22-2 0191-46-2255
地域に根ざした材木店で多種多様な材を扱う。
主は建築構造材だが原木から手間と時間を存分にかけて造材された広葉樹材は樹種も豊富で完全乾燥の良材を多数在庫している。
木工
ときがわ木協
埼玉県都幾川村大字本郷1014-4 0493-65-0264
素材・加工品? 元々建具屋が多く、その技術を活かした木工製品を扱うお店。
素材から選べるため、細かいオーダーも可能。
栗原木工所
埼玉県比企郡都幾川村本郷665
0493-65-2517
建具? 組子の高い技術の元、木製建具から座卓等家具材まで制作
自宅で使用の神代杉座卓の加工はこちらに依頼した。
坂本銘木店
埼玉県秩父市中蒔田2099-1 0494-23-7688
加工? テーブルや木製小物を製造・販売する。
新井木工所
埼玉県秩父市上影森3-6 0494-22-6116
加工? テーブルや木製小物を製造・販売する。
その他
高山林業群馬県中之条町大字下沢渡1230-3 0279-66-2540
美郷館? 本業は土建業。社長の趣味が高じて銘木を贅沢に使った温泉旅館・美郷館を建築。ここには木挽きの挽き材が多く使われている。
乾光精機製作所
長野県高森町山吹8685-1 0265-35-5345
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本業は精密機械。こちらも趣味が高じて建築を請け負う。製材機も入れ原木から扱う程。伝統工法で藁葺きなど本格的。